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誰聞けと鳴く雁がねぞわが宿の
尾花が末を過ぎがてにして

歌の意味
誰に聞けといって鳴く雁なのだろう。わが家の尾花の穂先の上を、通り過ぎかねるようにして。
鑑賞
巻第七 秋歌下 361

詞書「題しらず」
 わが家の尾花の穂先の上を、通り過ぎかねるようにして鳴く雁は、いったい誰に聞けといって鳴いているのかと詠んだ歌である。家の上で去りがたく鳴く雁の声に、聞く者の心をかき乱されるさまを表している。
 前歌が雁に家を避けてほしいと願ったのに対し、本歌では雁がわが家の上で去りかねて鳴いている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「誰聞けと」は、誰に聞けといって、の意である。本巻の第三百七十三首も同じ初句「誰聞けと」で、鹿の声を詠んでいる。
 二句「鳴く雁がねぞ」は、鳴く雁なのか、の意で、「ぞ」は初句の疑問の語「誰」を受けて問いかけている。ここで句切れとなる。
 三句「わが宿の」は、わが家の、の意である。
 四句「尾花が末を」は、穂の出たすすきの穂先の上を、の意である。
 結句「過ぎがてにして」は、通り過ぎかねるようにして、の意である。四句とともに二句と倒置の関係にあり、雁の鳴くさまを後から示している。

をばな:穂の出たすすき
すゑ:草木の先端、穂先
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
秋風に誘はれ渡る雁がねは 物思ふ人の宿をよかなん
次の歌
行き帰りここもかしこも旅なれや 来る秋ごとにかりかりと鳴く