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行き帰りここもかしこも旅なれや
来る秋ごとにかりかりと鳴く

歌の意味
行くのも帰るのも、ここもあそこも旅だからだろうか。めぐってくる秋ごとに、仮だ仮だと鳴くことだ。
鑑賞
巻第七 秋歌下 362

詞書「題しらず」
 雁にとっては行くのも帰るのも、ここもあそこもみな旅だからだろうか、秋が来るたびに「かり、かり」と鳴くと詠んだ歌である。雁の鳴き声を「仮」と聞きなし、定まる住みかを持たない雁の身の上を思いやっている。
 本巻の第三百六十二首から第三百六十四首までは、雁の鳴き声を「仮」と聞きなす歌が三首並んでいる。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「行き帰り」は、北へ行くのも南へ帰るのも、の意である。
 二句「ここもかしこも」は、こちらもあちらも、の意である。
 三句「旅なれや」の「や」は疑問で、旅だからだろうか、の意である。ここで句切れとなる。
 四句「来る秋ごとに」は、めぐってくる秋のたびに、の意である。
 結句「かりかりと鳴く」の「かり」は、鳥の「雁」とその鳴き声に、かりそめの意の「仮」を掛けた掛詞である。次歌の結句「かりとのみ鳴く」、第三百六十四首の四句「かりかりとのみ」も同じ掛詞を用いている。

かり:鳥の「雁」と、かりそめの意の「仮」を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
誰聞けと鳴く雁がねぞわが宿の 尾花が末を過ぎがてにして
次の歌
秋ごとに来れど帰ればたのまぬを 声に立てつつかりとのみ鳴く