秋風のうち吹くからに山も野も
なべて錦に織りかへすかな
- 歌の意味
-
秋風が吹くとすぐに、山も野も、すべて錦に織りかえることだ。
- 鑑賞
-
巻第七 秋歌下 388
詞書「題しらず」
秋風が吹くとすぐに、山も野もすべてを錦に織りかえてしまうと詠んだ歌である。秋風が一夜にして山野を色とりどりに変えるさまを、錦を織りなす秋風の力として表している。
前歌の「紅葉の錦」を受け、山だけでなく野までも錦に変える秋風を詠んでいる。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。
初句「秋風の」は、秋風が、の意である。
二句「うち吹くからに」の「からに」は、するとすぐに、の意の接続助詞で、吹くとすぐに、の意である。
三句「山も野も」は、山も野も、の意で、秋の景色のすべてを示している。
四句「なべて錦に」は、すべて錦に、の意である。
結句「織りかへすかな」は、織りかえることだ、の意で、「かな」は詠嘆の終助詞である。「織る」は「錦」の縁語である。
なべて:すべて、一様に
おりかへす:織りかえる、織り直す
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
幾木ともえこそ見分かね秋山の 紅葉の錦よそに立てれば
- 次の歌
-
などさらに秋かと問はむ唐錦 たつたの山の紅葉する世を