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古里を別れて咲ける菊の花
旅ながらこそにほふべらなれ

歌の意味
もとの土地を別れて咲いている菊の花は、旅の身のままで、美しく咲き匂っているようだ。
鑑賞
巻第七 秋歌下 399

詞書「他の菊を移し植ゑて」
 もとの土地を離れてここに咲いている菊の花は、旅の身のままで美しく咲き匂っているようだと詠んだ歌である。よそから移し植えた菊を旅人になぞらえ、慣れない土地でも美しく咲くさまをいとおしんでいる。
 詞書によれば、よその菊を移し植えて詠んだものである。前の二首に続いて菊を詠む歌である。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。

 初句「古里を」は、もといた土地を、の意である。
 二句「別れて咲ける」は、別れて咲いている、の意である。
 三句「菊の花」は、菊の花は、の意で、本巻の第三百九十七首の初句と同じ言葉である。
 四句「旅ながらこそ」は、旅の身のままで、の意で、移し植えられた菊を旅人になぞらえている。「こそ」は強めの係助詞である。
 結句「にほふべらなれ」の「べらなり」は推量を表す語で、美しく咲き匂っているようだ、の意である。四句の「こそ」と已然形「べらなれ」が係り結びをなしている。

ふるさと:もと住んでいた土地
べらなり:平安時代初期に用いられた推量の語、〜ようだ
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
名にし負へば長月ごとに君がため 垣根の菊はにほへとぞ思ふ
次の歌
何に菊色染めかへしにほふらん 花もてはやす君も来なくに