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いく千機織ればか秋の山ごとに
風に乱るる鏡なるらむ

歌の意味
いったい幾千の機で織ったからなのだろうか、秋の山ごとに、風に乱れている鏡であるのだろう。
鑑賞
巻第七 秋歌下 402

詞書「題しらず」
 いったい幾千の機で織ったからなのだろうか、秋の山という山に、風に乱れるものがあるのだろうと詠んだ歌である。山ごとに風に乱れて照り映える紅葉を、膨大な機で織り上げたものとして驚いている。
 前歌が月から散る紅葉を詠んだのに対し、本歌は山ごとに風に乱れる紅葉を詠んでいる。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。
 なお本文の結句は「鏡なるらむ」とあり、読み仮名の行の「にしきなるらむ」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。

 初句「いく千機」は、いったい幾千の機で、の意である。
 二句「織ればか」の「か」は疑問の係助詞で、織ったからだろうか、の意である。
 三句「秋の山ごとに」は、秋の山という山に、の意で、字余りである。
 四句「風に乱るる」は、風に乱れる、の意である。本巻の第四百七首も四句に同じ「風に乱るる」を置き、風に乱れ散る紅葉を詠んでいる。
 結句「鏡なるらむ」は、鏡であるのだろう、の意で、二句の「か」と連体形「らむ」が係り結びをなしている。本文は「鏡」とするが、二句の「織れば」と照応するのは読み仮名の行の「錦」である。

はた:布を織る道具、機
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
紅葉葉の散りくる見れば長月の 有明の月の桂なるらし
次の歌
なほざりに秋の山辺を越え来れば 織らぬ錦を着ぬ人ぞなき