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わたつみの神に手向くる山姫の
幣をぞ人は紅葉と言ひける

歌の意味
海の神に手向ける山の女神の幣を、人は紅葉と言っていたのだ。
鑑賞
巻第七 秋歌下 419

詞書「題しらず」
 人が紅葉と呼んでいたのは、山の女神が海の神に手向ける幣であったと詠んだ歌である。川を流れて海へと注ぐ紅葉を、山の女神が海の神へ捧げる供え物に見立てている。
 本巻の第四百十七首から続く、海と紅葉を取り合わせた歌の三首目である。山の紅葉が川を経て海へ流れる道筋を、山の神から海の神への捧げ物として結んでいる。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「わたつみの」は、海の、の意で、本巻の第四百十七首の三句と同じ語である。
 二句「神に手向くる」は、神に供える、の意で、海の神に捧げることを示している。
 三句「山姫の」は、山を守る女神の、の意である。
 四句「幣をぞ人は」の「幣」は、神に供える布や紙で、色とりどりの紅葉をこれに見立てている。「ぞ」は係助詞である。
 結句「紅葉と言ひける」は、紅葉と言っていたのだ、の意で、四句の「ぞ」と連体形「ける」が係り結びをなしている。

ぬさ:神に供える布や紙、旅の安全を祈って手向ける
たむく:神仏に供え物をささげる
やまひめ:山を守る女神
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
木の葉散る浦に浪立つ秋なれば 紅葉に花も咲きまがひけり
次の歌
ひぐらしの声もいとなく聞こゆるは 秋夕暮になればなりけり