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いたづらに露に置かるる花かとて
心も知らぬ人や折りけん

歌の意味
ただむなしく露に置かれているだけの花かと思って、私の心も知らない人が折ったのだろうか。
鑑賞
巻第七 秋歌下 431

詞書「菊の花折れりとて人の言ひ侍りければ」
 ただむなしく露に置かれているだけの花だと思って、私の心も知らない人が折っていったのだろうかと詠んだ歌である。大切にしていた菊を折られた残念さを、自分の心を知らない人への恨みとして表している。
 詞書によれば、人が、菊の花が折られていると言ったので詠んだものである。巻第六の第二百七十五首「秋の野の露におかるる女郎花」も、露に置かれる花を詠んでいる。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「いたづらに」は、むなしく、何の甲斐もなく、の意である。
 二句「露に置かるる」の「るる」は受身の助動詞「る」の連体形で、露に置かれる、の意である。
 三句「花かとて」は、花かと思って、の意である。
 四句「心も知らぬ」は、私の心も知らない、の意で、菊を大切に思う持ち主の心を指している。
 結句「人や折りけん」の「や」は疑問の係助詞、「けん」は過去推量の助動詞で、係り結びをなし、人が折ったのだろうか、の意である。

いたづら:むなしいこと、無益なこと
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
明かからば見るべきものを雁がねの いづこばかりに鳴きて行くらん
次の歌
枝も葉もうつろふ秋の花見れば 果ては影なくなりぬべらなり