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思ひ出でて問ふにはあらじ秋果つる
色の限りを見するなるらん

歌の意味
私を思い出して訪ねてくれたのではないだろう。秋が果てる、その色の最後を見せているのだろう。
鑑賞
巻第七 秋歌下 439

詞書「忘れにける男の、紅葉を折りて送りて侍りければ」
 あなたが紅葉を送ってきたのは、私を思い出して訪ねてくれたのではないだろう、秋が終わる、その色の最後を見せようとしているのだろうと詠んだ歌である。紅葉に添えた男の心を、二人の仲の終わりを告げるものと受け取っている。
 詞書によれば、自分を忘れてしまった男が、紅葉を折って送ってきたので詠んだものである。「秋果つる」には、心が離れる意の「飽き果つる」が響き、「色の限り」には、恋の情けの終わりが重ねられている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。

 初句「思ひ出でて」は、私を思い出して、の意である。
 二句「問ふにはあらじ」の「じ」は打消推量の助動詞で、訪ねてくれたのではないだろう、の意である。ここで句切れとなる。
 三句「秋果つる」は、秋が終わる、の意で、「秋」には「飽き」が響いている。
 四句「色の限りを」は、色の最後を、の意で、紅葉の最後の色と、恋の情けの尽きることを重ねている。
 結句「見するなるらん」は、見せているのだろう、の意である。

はつ:終わる、尽きる
かぎり:限界、終わり、最後
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
紅葉葉は散る木のもとにとまりけり 過ぎゆく秋やいづちなるらむ
次の歌
宇治山の紅葉を見ずは長月の 過ぎゆくひをも知らずぞあらまし