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涙川身投ぐばかりの淵はあれど
氷解けねば行く方もなし

歌の意味
涙の川には、身を投げるほどの深い淵はあるけれど、氷が解けないので、流れていく先もない。
鑑賞
巻第八 冬歌 494

詞書「題しらず」
 涙の川には身を投げるほどの深い淵はあるけれど、氷が解けないので流れていく先もない、と詠んだ歌である。涙を川にたとえ、深い悲しみを抱えながらも、相手の心が凍ったように解けないため、どうにもならない恋の苦しさを表している。
 冬の氷を恋の思いに重ねた歌で、本巻の第四百六十三首や第四百八十一首の袖の氷と同じく、涙と氷を結びつけている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「涙川」は、流れる涙を川にたとえた語である。
 二句「身投ぐばかりの」は、身を投げるほどの、の意で、涙の深さを誇張している。
 三句「淵はあれど」は、深い淵はあるけれど、の意で、「ど」は逆接の接続助詞である。
 四句「氷解けねば」は、氷が解けないので、の意で、冬の氷に、打ち解けない相手の心やふさがった思いを重ねている。
 結句「行く方もなし」は、流れていく先もない、の意で、思いのやり場のなさを表している。

なみだがは:流れる涙を川にたとえた語
ふち:川の水が深くよどんだところ
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
降る雪は消えでもしばしとまらなん 花ももみぢも枝になきころ
次の歌
降る雪にもの思ふわが身劣らめや 積もり積もりて消えぬばかりぞ