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この月の年のあまりに足らざらば
鶯ははや鳴きぞしなまし

歌の意味
この月が、年の余りの月に当たらなかったならば、鶯はもう鳴いていたことだろう。
鑑賞
巻第八 冬歌 504

詞書「題しらず」
 この月が年の余りの月に当たらなかったならば、鶯はもう鳴いていたことだろう、と詠んだ歌である。年の余りの月、すなわち閏月があるために春の訪れが遅れていることを、春を告げる鶯がまだ鳴かないことに託して惜しんでいる。
 年の暮れに春を待つ歌が続くなかに置かれ、暦の上の事情によって春が遠のくことを嘆いている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「この月の」は、この月が、の意で、年の暮れの月を指している。
 二句「年のあまりに」の「年のあまり」は、年の余りの月、すなわち閏月のことと解される。
 三句「足らざらば」は、当たらなかったならば、の意で、反実仮想の条件を示している。
 四句「鶯ははや」は、鶯はもう、の意で、鶯は春を告げる鳥である。
 結句「鳴きぞしなまし」の「まし」は反実仮想の助動詞で、係助詞「ぞ」と係り結びをなし、鳴いていたことだろう、の意である。

としのあまり:年の余りの月、閏月
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
むばたまの夜のみ降れる白雪は 照る月影の積もるなりけり
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関越ゆる道とはなしに近ながら 年にさはりて春を待つかな