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玉梓に涙のかかる心地して
時雨るる空に雁の鳴くなる

歌の意味
手紙に涙が降りかかるような心地がして、時雨の降る空に雁が鳴いている。
鑑賞
巻第六 冬歌 415

詞書は前の歌に続き「円位法師人々に勧めて、百首の歌よませ侍りけるとき、時雨の歌とてよめる」
 西行の勧めによる百首歌の時雨の歌である。時雨の降る空に雁が鳴いている、その声を聞くと、手紙に涙が降りかかるような心地がする、と詠む。雁が手紙を運ぶという故事をふまえ、時雨を涙に、空を渡る雁を手紙を運ぶ使いに見立てて、遠く離れた人を思う悲しみを表している。
 作者の「よみ人しらず」は、作者の名が伝わらないことを示す。
 前歌の第四百十四首と同じく、西行の勧めによる百首歌の時雨の歌である。雁が手紙を運ぶという話は、匈奴に捕らわれた漢の蘇武が雁の足に手紙を結んで便りを届けたという中国の故事による。

 初句「玉梓に」の「玉梓」は手紙、便りの意である。雁が手紙を運ぶという故事から、結句の「雁」と縁がある。
 二句「涙のかかる」の「かかる」は、降りかかる意で、時雨を涙に見立てる。
 三句「心地して」は、そのような気持ちがして、の意である。
 四句「時雨るる空に」の「時雨る」は時雨が降る意である。時雨を涙と重ね、空と手紙とを結ぶ。
 結句「雁の鳴くなる」の「なる」は音による推定の助動詞「なり」の連体形で、雁が鳴いているのが聞こえる、の意である。

たまづさ:手紙、便り
かり:雁。手紙を運ぶ使いともされる
作者
よみ人しらず
出典
千載和歌集
前の歌
時雨れつる真屋の軒端のほどなきに やがて差し入る月の影かな
次の歌
峰越えに楢の葉伝ひおとづれて やがて軒端に時雨来にけり