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逢ふことはいとど雲居の大空に
立つ名のみして止みぬばかりか

歌の意味
逢うことは、いよいよ雲のかかる遠い大空のように遠くなって、浮き名ばかりが立って、そのまま終わってしまうのだろうか。
鑑賞
巻第九 恋歌一 534

詞書「女のもとに」
 逢うことはいよいよ遠くなり、雲が大空に立つように浮き名ばかりが立って、恋は終わってしまうのか、と詠んだ歌である。実際には逢えないのに噂だけが広まる恋のむなしさを嘆いている。
 詞書によれば、女のもとへ送った歌である。次歌は女の返歌、その次は男の再度の歌で、三首は雲を詠みこんだ贈答の一連となっている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。

 初句「逢ふことは」は、逢うことは、の意である。次歌の三句と同じ句である。
 二句「いとど雲居の」は、いっそう雲のかかる遠い、の意で、逢うことが遠くかけ離れたことをいっている。
 三句「大空に」は、大空に、の意で、雲が立つことから四句の「立つ」を導いている。
 四句「立つ名のみして」は、浮き名ばかりが立って、の意で、「立つ」は雲の縁語である。本巻の第五百三十九首の四句と同じ句である。
 結句「止みぬばかりか」は、終わってしまうばかりなのか、の意で、本巻の第五百十七首の二句と同じ語である。

くもゐ:雲のある遠い所、はるかな空
たつな:世間に立つうわさ、浮き名
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
立ち帰り濡れては干ぬる潮なれば 生田の浦のさがとこそ見れ
次の歌
よそながら止まんともせず逢ふことは 今こそ雲の絶え間なるらめ