来んと言ひし月日を過ぐす姨捨の
山の端つらきものにぞありける
- 歌の意味
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来ようと言った月日を過ぎてしまうあなたは、月を隠す姨捨山の山の端のように、つらく恨めしいものであったよ。
- 鑑賞
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巻第九 恋歌一 542
詞書「そのほどに帰り来んとてものにまかりける人の、ほどを過ぐして来ざりければつかはしける」
帰って来ると約束した月日を過ぎても来ない相手を、月を隠してしまう姨捨山の山の端にたとえ、恨めしいものだと詠んだ歌である。「月日」の「月」から月の名所の姨捨山を導き、約束を破った相手を責めている。
詞書によれば、その時分には帰って来ると言って出かけた人が、期限を過ぎても帰らなかったので送った歌である。次歌はその返歌で、二首は贈答の一組となっている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。
初句「来んと言ひし」は字余りで、来ようと言った、の意である。
二句「月日を過ぐす」は、約束の月日を過ごしてしまう、の意で、「月」から三句の「姨捨」を導いている。次歌の初句「月日をも」がこれを受けている。
三句「姨捨の」は、信濃の国の姨捨山の、の意で、月の名所として知られた歌枕である。
四句「山の端つらき」は、月を隠す山の端がつらい、の意で、約束を違えた相手をたとえている。
結句「ものにぞありける」は、ものであったよ、の意で、係助詞「ぞ」と連体形「ける」が係り結びをなしている。
をばすて:信濃の国の姨捨山、月の名所として知られる歌枕
やまのは:山の稜線、空と接する山の端
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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あだにこそ散ると見るらめ君にみな うつろひにたる花の心を
- 次の歌
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月日をも数へけるかな君恋ふる 数をも知らぬ我が身何なり