- 歌の意味
-
高島の三尾の中山を杣山として木を切り出し、千代にわたって並ぶ倉を作り重ねよ。
- 鑑賞
-
巻第十 神楽歌 605
詞書「安和元年大嘗会風俗:三尾山」
高島の三尾の中山から材木を切り出して、千代にわたる並び倉を作り重ねよと詠む歌である。豊かな実りを納める倉が次々と建ち並ぶさまに、御代の豊かさと永続を重ねて祝っている。前歌の第六百四首が大蔵山の名に貢ぎ物の蔵を見たのに続き、倉を作り重ねることを詠んでいる。
詞書の「安和元年大嘗会風俗」は、冷泉天皇の即位に伴って安和元年に行われた大嘗会で奉られた風俗の歌であることを示す。大嘗会では、悠紀と主基に選ばれた国の地名を詠み込んだ歌が奉られ、ここから第六百八首まで、その国の山や浜の名を題とする歌が並ぶ。
初句「高島や」は、近江国の高島の、の意で、「や」は語調を整える間投助詞である。
二句「三尾の中山」は、高島の三尾の中山、の意で、題の地名である。
三句「杣立てて」は、杣山として材木を切り出して、の意である。
四句「作り重ねよ」は、作り重ねよ、の意で、命令形である。ここで句切れとなる四句切れの歌で、結句は作るものを倒置して示している。
結句「千代の並倉」は、千代にわたって並び立つ倉、の意で、体言止めである。前歌の第六百四首の二句「おほくら山は」の蔵と、倉の語でつながっている。
そま:杣。材木を切り出す山
なみくら:並倉。立ち並ぶ倉
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
貢ぎ積むおほくら山は常盤にて 色も変はらず万代ぞ経む
- 次の歌
-
磨きける心もしるく鏡山 曇りなき世に逢ふが楽しさ