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思ふ人思はぬ人の思ふ人
思はざらなん思ひ知るべく

歌の意味
私が恋い慕っているのに私を思ってくれないあなた、そのあなたが思っている人よ、どうかあなたを思わないでほしい。あなたが片思いのつらさを思い知るように。
鑑賞
巻第九 恋歌一 571

詞書「思ふ人侍りける女に物のたうびけれど、つれなかりければつかはしける」
 私が思うのに私を思わないあなたが、ほかに思いを寄せる人は、どうかあなたを思わないでほしい、そうすればあなたも片思いのつらさがわかるだろう、と詠んだ歌である。「思ふ」を五度も重ねる言葉遊びのなかに、報われない恋の恨みをこめている。
 詞書によれば、ほかに思う人がいる女に言い寄ったが冷淡だったので送った歌である。次歌は女の返歌で、二首は贈答の一組となっている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。

 初句「思ふ人」は、私が思う人、の意で、相手の女をさしている。
 二句「思はぬ人の」は、私を思わない人の、の意で、初句と同じく相手の女をさしている。
 三句「思ふ人」は、その女が思っている人、の意で、初句と同じ語を重ねている。
 四句「思はざらなん」の「なん」は他に対する願望を表す終助詞で、思わないでいてほしい、の意である。
 結句「思ひ知るべく」は、思い知るように、の意で、一首に「思ふ」の語を五度重ねている。

おもひしる:身にしみて悟る
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
うち渡し長き心は八橋の 蜘蛛手に思ふことは絶えせじ
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木枯らしの森の下草風早み 人のなげきは生ひ添ひにけり