古典和歌stream

身を分けてあらまほしくぞ思ほゆる
人は苦しと言ひけるものを

歌の意味
身を二つに分けていたいと思われる。人はそれを苦しいことだと言ったのに。
鑑賞
巻第九 恋歌一 575

詞書「題しらず」
 身を二つに分けていたいと思われる、人はそれを苦しいと言ったのに、と詠んだ歌である。恋しい人のそばにいる身と、もう一つの身とに分かれたいと願うほどの思いを表している。
 人の言う苦しさを承知のうえで、なお身を分けたいと願うところに、恋の切実さがこめられている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。

 初句「身を分けて」は、わが身を二つに分けて、の意である。
 二句「あらまほしくぞ」の「まほし」は願望の助動詞で、いたいと、の意である。「ぞ」は強めの係助詞である。
 三句「思ほゆる」は、自然に思われる、の意で、二句の「ぞ」を受けて連体形で結ぶ係り結びとなっている。ここで句切れとなる。
 四句「人は苦しと」は、人は苦しいことだと、の意である。
 結句「言ひけるものを」の「ものを」は逆接を表し、言ったのに、の意である。

みをわく:身を二つに分ける
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
泣きたむる袂凍れる今朝見れば 心解けても君を思はず
次の歌
雲居にて人を恋しと思ふかな 我は葦辺の鶴ならなくに