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人の上のこととし言へば知らぬかな
君も恋する折もこそあれ

歌の意味
他人の身の上のことと言えば、知らないふりをするのだね。あなたも恋をする時が、きっとあるだろうに。
鑑賞
巻第九 恋歌一 591

詞書「女につかはしける」
 恋を他人の身の上のことと思って知らぬふりをしているが、あなたも恋する時がきっとあるだろう、と詠んだ歌である。自分の恋の苦しみをわかろうとしない相手に、いずれ同じ思いをするだろうと言い聞かせている。
 詞書によれば、女に送った歌である。次歌は女の返歌で、二首は贈答の一組となっている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。

 初句「人の上の」は字余りで、他人の身の上の、の意である。
 二句「こととし言へば」の「し」は強めの副助詞で、ことと言えば、の意である。
 三句「知らぬかな」は、知らないふりをするのだね、の意で、ここで句切れとなる。
 四句「君も恋する」は、あなたも恋をする、の意である。次歌の結句「恋ひんともせず」がこれを受けている。
 結句「折もこそあれ」は、時がきっとあるだろう、の意で、係助詞「こそ」と已然形「あれ」が係り結びをなし、困ったことになる時もあろうという含みをもっている。

をり:時、場合
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
行く方もなくせかれたる山水の いはまほしくも思ほゆるかな
次の歌
つらからば同じ心につらからん つれなき人を恋ひんともせず