現にもはかなきことのあやしきは
寝なくに夢の見ゆるなりけり
- 歌の意味
-
現実にも、はかないことで不思議なのは、寝てもいないのに夢が見えることであったのだ。
- 鑑賞
-
巻第九 恋歌一 598
詞書「男につかはしける」
現実でもはかないことで不思議なのは、寝てもいないのに夢が見えることだ、と詠んだ歌である。眠れぬままに相手の面影が浮かぶさまを、起きながら見る夢にたとえている。
詞書によれば、男に送った歌である。本巻の第五百九首も、眠ってもいないのに人を見たことを夢になぞらえている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「現にも」は、現実でも、の意である。
二句「はかなきことの」は、はかないことで、の意である。
三句「あやしきは」は、不思議なのは、の意である。
四句「寝なくに夢の」の「なく」は打消しの助動詞「ず」のク語法で、寝てもいないのに夢が、の意である。本巻の第五百九首の初句「まどろまぬ」と同じ趣向である。
結句「見ゆるなりけり」は、見えるのであったのだ、の意で、「なりけり」は気づきを表している。
うつつ:現実、目覚めている状態
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
すみよしの我が身なりせば年経とも 松より外の色を見ましや
- 次の歌
-
白浪のよるよる岸に立ち寄りて ねも見しものをすみよしの松