わたつみと頼めし事もあせぬれば
我ぞ我が身のうらはうらむる
- 歌の意味
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海のように深いと頼みにさせたあなたの約束も浅くなってしまったので、私こそが我が身の上を恨んでいるのだ。
- 鑑賞
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巻第十 恋歌二 618
詞書「返し」
海のように深いと頼みにさせた約束も浅くなったので、私こそが我が身の上を恨む、と詠んだ歌である。前歌で恨むことさえできないと訴えた相手に、恨みたいのはこちらのほうだと切り返している。
前歌の第六百十七首に対する返しで、前歌の「海」「泡」を受けて、「わたつみ」「あす」「浦」と海にちなむ語で応じている。
作者の伊勢は、伊勢守藤原継蔭の娘で、宇多天皇の中宮温子に仕えた。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「難波潟短き芦のふしの間も」の歌が採られている。
初句「わたつみと」は、海のように深いと、の意で、前歌の「海」を受けている。
二句「頼めし事も」は、頼みにさせた約束も、の意である。
三句「あせぬれば」は、浅くなってしまったので、の意で、「あす」は海の縁語である。
四句「我ぞ我が身の」は、私こそが我が身の、の意で、「ぞ」は強めの係助詞である。前歌の「身」を受けている。
結句「うらはうらむる」の「うら」は、海の「浦」と、心や身の上の意を掛けた掛詞で、「うらむる」にも浦を見る意を響かせている。四句の「ぞ」を受けて連体形「うらむる」で結ぶ係り結びとなっている。
わたつみ:海、海の神
あす:浅くなる、褪せる
うら:海の「浦」の意と、心や身の上の意を掛ける
うらむ:恨む意に、浦を見る意を響かせる
- 作者
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伊勢
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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世をうみのあわと消えぬる身にしあれば 恨むることぞ数なかりける
- 次の歌
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東路の佐野の舟橋かけてのみ 思ひわたるを知る人のなき