わびわたる我が身は露を同じくは
君が垣根の草に消えなん
- 歌の意味
-
嘆き続けている我が身は露のようにはかないのだから、どうせ同じことなら、あなたの家の垣根の草の上で消えてしまいたい。
- 鑑賞
-
巻第十 恋歌二 649
詞書「心ざせる女の家のあたりにまかりて、言ひ入れ侍りける」
嘆き続ける我が身は露のようにはかないのだから、同じことならあなたの家の垣根の草で消えたい、と詠んだ歌である。いずれ消える身ならせめて恋しい人のそばで果てたいと、ひたむきな思いを訴えている。
詞書によれば、思いを寄せる女の家のあたりに出かけて、外から言葉を伝え入れた歌である。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の一人で、土佐守などを務めた。『土佐日記』の作者としても知られ、三十六歌仙の一人である。
初句「わびわたる」は、嘆き続けている、の意である。
二句「我が身は露を」は、我が身は露のようにはかないのだから、の意である。
三句「同じくは」は、どうせ同じことなら、の意である。
四句「君が垣根の」は、あなたの家の垣根の、の意である。
結句「草に消えなん」は、草の上で消えてしまいたい、の意で、「なん」は強い意志を表す。「消ゆ」は露の縁語である。
いひいる:外から家の中へ言葉を伝え入れる
かきね:垣根
- 作者
-
紀貫之
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
富士の嶺の燃えわたるともいかがせむ 消ちこそ知らね水ならぬ身は
- 次の歌
-
みるめ刈る渚やいづこあふごなみ 立ち寄る方も知らぬ我が身は