たよりにもあらぬ思ひのあやしきは
心を人につくるなりけり
- 歌の意味
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これといったきっかけもないのに起こる恋の思いの不思議なところは、心をあの人に寄せてしまうことであったのだ。
- 鑑賞
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巻第十 恋歌二 687
詞書「はつかに人を見てつかはしける」
きっかけもないのに起こる思いの不思議さは、心をあの人に寄せてしまうことだった、と詠んだ歌である。わずかに見かけただけで心ひかれた自分を不思議がる形で、相手への思いを伝えている。
詞書によれば、ほんのわずかに人を見て送った歌である。前歌の第六百八十六首の「思ひつく」に続き、本歌も心を人に「つくる」と詠んでいる。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の一人で、土佐守などを務めた。『土佐日記』の作者としても知られ、三十六歌仙の一人である。
初句「たよりにも」は、よりどころとしても、の意である。
二句「あらぬ思ひの」は、ないのに起こる思いの、の意である。
三句「あやしきは」は、不思議なのは、の意である。
四句「心を人に」は、心をあの人に、の意である。
結句「つくるなりけり」は、寄せてしまうことであったのだ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表している。前歌の「思ひつく」と響き合っている。
たより:よりどころ、きっかけ
つく:心を寄せる、思いを寄せる
- 作者
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紀貫之
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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人づてに言ふ言の葉の中よりぞ 思ひつくばの山は見えける
- 次の歌
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人妻に心あやなくかけはしの 危ふき道は恋にぞありける