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しののめに飽かで別れし袂をぞ
露や分けしと人はとがむる

歌の意味
夜明けに名残惜しく別れて涙に濡れた袂を、露の置いた草を分けて来たのかと、人は見とがめる。
鑑賞
巻第十一 恋歌三 721

詞書「題しらず」
 夜明けに名残惜しく別れた袂の濡れを、露の野を分けてきたのかと人がとがめる、と詠んだ歌である。別れの涙で濡れた袖を、人には露に濡れたものと見られるという形で、隠しきれない恋の涙を詠んでいる。
 前歌の第七百二十首に続き、夜明けの別れを詠んだ歌である。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「しののめに」は、夜明けに、の意である。本巻の第七百十九首の「暁」、前歌の「けさ」に続き、夜明けを表す語を置いている。
 二句「飽かで別れし」は、名残惜しく別れた、の意で、本巻の第七百十九首の四句「飽かぬ別れや」と同じ趣を詠んでいる。
 三句「袂をぞ」は、袂を、の意で、「ぞ」は強めの係助詞である。
 四句「露や分けしと」は、露を分けて来たのかと、の意で、前歌の三句「朝露の」と同じく露を詠み込んでいる。
 結句「人はとがむる」は、人は見とがめる、の意で、三句の「ぞ」を受けて連体形「とがむる」で結ぶ係り結びとなっている。

しののめ:夜明け、明け方
たもと:袖、またその袋状の部分
とがむ:不審に思って問いただす
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
恋しきに消えかへりつつ朝露の けさはおきゐん心地こそせね
次の歌
恋しきも思ひこめつつあるものを 人に知らるる涙何なり