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鶯の巣作る枝を折りつれば
こうばいかでか産まむとすらん

歌の意味
鶯が巣を作っている枝を折ってしまったので、鶯は子をどうやって産もうとするのだろうか。
鑑賞
巻第七 物名 354

詞書「紅梅」
 鶯が巣を作っている枝を折ってしまったので、鶯はどうやって子を産もうとするのだろうかと案じる歌である。表の意味とは別に、四句の「こうばいかでか」の音の続きの中に、詞書の「紅梅」の名を隠して詠み込んでいる。詞書の「紅梅」は、この歌に詠み込まれた物の名である。本巻は物名の巻で、歌の意味とは別に、物の名を音の続きの中に隠して詠み込んだ歌を集めている。巻頭のこの歌は春の鶯と紅梅を詠み、巻末の第四百三十一首は秋風に散る紅葉を詠んで、春の花と秋の紅葉とで巻頭と巻末が呼応している。古今和歌集の物名の巻も、藤原敏行の鶯の名を隠した歌から始まっている。
 なお本文の四句は「こうは」とあり、読み仮名の行の「こをは」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。

 初句「鶯の」は、春を告げる鳥の鶯の、の意である。巻頭に春の鳥を置き、次歌の第三百五十五首の桜とともに、春の景物から巻が始まっている。
 二句「巣作る枝を」は、巣を作っている枝を、の意で、鶯の巣のある紅梅の枝を思わせる。
 三句「折りつれば」は、折ってしまったので、の意で、「つれ」は完了の助動詞「つ」の已然形であり、「ば」がついて理由を表す。本巻の第三百六十六首の三句も同じ「折りつれば」である。
 四句「こうばいかでか」は、子をばどのようにして、の意で、「こうば」は「子をば」にあたる。「こうばいか」の音の続きの中に「こうばい」、すなわち紅梅の名を隠している。「か」は疑問の係助詞である。
 結句「産まむとすらん」は、産もうとするのだろうか、の意で、「らん」は現在推量の助動詞であり、係助詞「か」を受けて連体形で結ぶ。

こうばい:紅梅。「子をば如何でか」の音の続きに隠して詠み込む
すづくる:巣を作る
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
天飛ぶや雁の使ひにいつしかも 奈良の都に言伝てやらん
次の歌
花の色をあらはに愛でばあだめきぬ いざくらやみになりてかざさむ