天飛ぶや雁の使ひにいつしかも
奈良の都に言伝てやらん
- 歌の意味
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空を飛ぶ雁を使いとして、早く奈良の都へ言伝てを送りたいものだ。
- 鑑賞
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巻第六 別歌 353
詞書「唐土にて」
空を飛ぶ雁を使いとして、早く奈良の都へ便りを送りたいと詠む歌である。遠い異国から故郷の都を思う望郷の念を、雁の使いという故事に託している。詞書によれば、唐土で詠んだ歌である。雁の使いは、匈奴に捕らえられた漢の蘇武が雁の足に手紙を結びつけて故国に便りを送ったという故事による。別の巻の巻末に置かれ、旅先から都へ思いを送る歌で巻を閉じている。巻頭の第三百一首が都に残って旅立つ人を見送る歌であったのに対し、巻末は都を遠く離れた旅人の歌となり、見送る側と旅をする側とで巻頭と巻末が呼応している。
作者の「かきのもとの人まろ」は柿本人麻呂である。飛鳥時代の宮廷歌人で、万葉集を代表する歌人として歌聖と仰がれる。三十六歌仙に数えられる。
人麻呂が唐土に渡ったという確かな記録はなく、万葉集巻十五の遣新羅使人の歌に類歌が見える。
初句「天飛ぶや」は、雁にかかる枕詞である。
二句「雁の使ひに」は、雁を手紙の使いとして、の意である。本巻の第三百四首、第三百四十五首にも雁が詠まれ、巻末で便りを運ぶ使いとして結ばれる。
三句「いつしかも」は、早く、いつになったら、の意で、待ち望む心を表す。
四句「奈良の都に」は、奈良の都に、の意である。
結句「言伝てやらん」は、言伝てを送りたい、の意で、「ん」は意志の助動詞である。本巻の第三百三十九首の「告げやらん」と同じく、旅先から都へ便りを送りたいという願いを詠んでいる。
かりのつかひ:手紙を運ぶ使いとしての雁
ことづつ:人に頼んで伝える。言伝つ
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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浪の上に見えし小島の島隠れ 行く空もなし君に別れて
- 次の歌
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鶯の巣作る枝を折りつれば こうばいかでか産まむとすらん