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清けれど玉ならぬ身のわびしきは
磨けるものに言はぬなりけり

歌の意味
身は潔白であるけれど、玉ではないこの身がつらいのは、玉のように磨かれた清らかなものだと、人が言ってくれないことなのだ。
鑑賞
巻第十一 恋歌三 726

詞書「なき名立ちけるころ」
 潔白であっても玉ではない身がつらいのは、磨いた清らかなものと言ってもらえないことだ、と詠んだ歌である。根も葉もないうわさを立てられ、身の潔白を玉にたとえて訴えるすべのない嘆きを述べている。
 詞書によれば、根拠のないうわさが立ったころに詠んだ歌である。前歌の第七百二十五首に続き、「なき名」を題材とした歌である。
 作者の伊勢は、伊勢守藤原継蔭の娘で、宇多天皇の中宮温子に仕えた。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「難波潟短き芦のふしの間も」の歌が採られている。

 初句「清けれど」は、清らかであるけれど、の意で、身の潔白をいう。
 二句「玉ならぬ身の」は、玉ではない身が、の意である。
 三句「わびしきは」は、つらいのは、の意である。本巻の第七百三首、第七百四首の三句と同じ句で、結句の「なりけり」と合わせて同じ型をとっている。
 四句「磨けるものに」は、磨いたものとして、の意で、玉を磨いて輝かせることを踏まえている。
 結句「言はぬなりけり」は、言ってくれないことなのだ、の意で、「なりけり」は気づきの詠嘆を表す。

たま:宝玉、美しい石
みがく:玉などを磨いて輝かせる
作者
伊勢
出典
後撰和歌集
前の歌
なき名ぞと人には言ひてありぬべし 心の問はばいかが答へん
次の歌
逢ふことをいざほに出でなん篠すすき 忍びはつべきものならなくに