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逢ふことをいざほに出でなん篠すすき
忍びはつべきものならなくに

歌の意味
逢っていることを、さあ表に出してしまおう。篠すすきが穂を出すように。いつまでも忍び通せるものではないのだから。
鑑賞
巻第十一 恋歌三 727

詞書「忍びて住み侍りける女につかはしける」
 逢っていることを篠すすきが穂を出すように表に出そう、忍び通せるものではないのだから、と詠んだ歌である。人目を忍ぶ関係に耐えきれず、二人の仲を公にしようと女に呼びかけている。
 詞書によれば、ひそかに通って夫婦となっていた女に送った歌である。前歌までの「なき名」の歌に続き、人に知られることを恐れる恋から、あえて知らせようとする恋へと転じている。
 作者の藤原敦忠は、左大臣藤原時平の三男で、権中納言を務めた。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「逢ひ見ての後の心にくらぶれば」の歌が採られている。

 初句「逢ふことを」は、逢っていることを、の意である。
 二句「いざほに出でなん」は、さあ表に出してしまおう、の意で、「ほ」はすすきの「穂」と、表面の意の「秀」を掛ける掛詞である。「なん」は強い意志を表す。ここで句切れとなる。
 三句「篠すすき」は、細いすすきの意で、穂を出すものとして二句の「ほに出で」を受けるとともに、同音の繰り返しで四句の「忍び」を導いている。
 四句「忍びはつべき」は、最後まで忍び通すことができる、の意である。
 結句「ものならなくに」は、ものではないのだから、の意で、二句と倒置の関係にある。

ほ:すすきの「穂」の意と、表に現れる意の「秀」を掛ける
しのすすき:細く小さいすすき、また穂の出ていないすすき
しのびはつ:最後まで隠し通す
作者
藤原敦忠
出典
後撰和歌集
前の歌
清けれど玉ならぬ身のわびしきは 磨けるものに言はぬなりけり
次の歌
あひ見ても別るることのなかりせば かつがつ物は思はざらまし