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別れつるほども経なくに白波の
立ち帰りても見まくほしきか

歌の意味
別れてからまだ少しの時もたっていないのに、白波が寄せては返すように、すぐに引き返してでもまた逢いたいことだ。
鑑賞
巻第十一 恋歌三 730

詞書「人のもとより暁帰りて」
 別れてから時もたたないのに、白波が寄せ返すように引き返してでも逢いたい、と詠んだ歌である。明け方に帰ったばかりで、もう引き返したくなるほどの恋しさを、打ち返す白波にたとえている。
 詞書によれば、恋人のもとから明け方に帰って詠んだ歌である。前歌の第七百二十九首と同じ詞書を持ち、別れて間もない時の恋しさを詠む点も共通している。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の一人で、土佐守などを務めた。『土佐日記』の作者としても知られ、三十六歌仙の一人である。

 初句「別れつる」は、別れた、の意である。
 二句「ほども経なくに」は、時もたたないのに、の意で、前歌の結句「ひるまばかりに」と同じく、別れてからのわずかな時をいう。
 三句「白波の」は、白波が寄せては返すことから、四句の「立ち帰り」を導く序詞となっている。
 四句「立ち帰りても」は、引き返してでも、の意で、「立ち」は波が立つ意を響かせている。
 結句「見まくほしきか」は、逢いたいことだ、の意で、「まくほし」は願望を表し、「か」は詠嘆を表す。

たちかへる:引き返す、波が寄せては返す
作者
紀貫之
出典
後撰和歌集
前の歌
いつのまに恋しかるらん唐衣 濡れにし袖のひるまばかりに
次の歌
人知れぬ身は急げども年を経て など越えがたき逢坂の関