古典和歌stream

夢にだにまだ見えなくに恋しきは
いつに習へる心なるらん

歌の意味
夢の中にさえまだ姿を見たことがないのに恋しく思うのは、いつ覚えた心なのだろうか。
鑑賞
巻第十一 恋歌三 740

詞書「題しらず」
 夢にさえまだ見ていないのに恋しいのは、いつ覚えた心なのか、と詠んだ歌である。まだ逢うどころか夢にも見ない人を恋い慕う自分の心を、不思議がる形で述べている。
 巻第十の第六百三首の「我が心いつ習ひてか見ぬ人を」と同じく、見ぬ人を恋う心を、いつ覚えたのかと問う趣向である。
 作者の在原元方は、在原業平の孫で、在原棟梁の子である。古今和歌集の巻頭歌「年の内に春は来にけり」の作者として知られる。

 初句「夢にだに」は、夢にさえ、の意で、「だに」は程度の軽いものをあげる副助詞である。
 二句「まだ見えなくに」は、まだ見えないのに、の意である。
 三句「恋しきは」は、恋しいのは、の意である。
 四句「いつに習へる」は、いつ覚えた、の意である。巻第十の第六百三首の二句「いつ習ひてか」と同じ言い回しを用いている。
 結句「心なるらん」は、心なのだろう、の意で、「らん」は原因を推量する。

ならふ:習い覚える、慣れる
作者
在原元方
出典
後撰和歌集
前の歌
夕されば我が身のみこそ悲しけれ いづれの方に枕定めむ
次の歌
思ふてふことをぞねたく古しける 君にのみこそ言ふべかりけれ