人知れぬ我が物思ひの涙をば
そでにつけてぞ見すべかりける
- 歌の意味
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人知れず思い悩んで流す私の涙を、袖につけて、この袖という使いに託して見せるべきだったのだ。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌三 762
詞書「人の心つらくなりにければ、袖といふ人を使ひにて」
人知れぬ物思いの涙を、袖につけて見せるべきだった、と詠んだ歌である。使いの者の名が「袖」であることに掛けて、涙に濡れた袖を見せるように、つらい胸の内を相手に伝えようとしている。
詞書によれば、相手の心が冷たくなったので、袖という名の人を使いにして送った歌である。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「人知れぬ」は、人に知られない、の意である。本巻の第七百三十一首の初句も「人知れぬ」で、同じ句を共有している。
二句「我が物思ひの」は、私の物思いの、の意で、字余りとなっている。
三句「涙をば」は、涙を、の意である。
四句「そでにつけてぞ」の「そで」は、涙を拭う「袖」と、使いの者の名の「袖」を掛ける掛詞である。「ぞ」は強めの係助詞である。
結句「見すべかりける」は、見せるべきだったのだ、の意で、四句の「ぞ」を受けて連体形「ける」で結ぶ係り結びとなっている。
そで:衣の「袖」の意と、使いの者の名の「袖」を掛ける
ものおもひ:思い悩むこと
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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世とともになげきこりつむ身にしあれば なぞやまもりのあるかひもなき
- 次の歌
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山の端にかかる思ひの絶えざらば 雲居ながらもあはれと思はん