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時の間のうつつをしのぶ心こそ
はかなき夢にまさらざりけれ

歌の意味
ほんのわずかな間の現実を慕い求める心こそ、はかない夢にもまさらないものなのだ。
鑑賞
巻第十一 恋歌三 767

詞書「返し」
 わずかな間の現実を慕う心こそ、はかない夢にも劣るものだ、と詠んだ返歌である。片時でも現実に逢いたいという相手の願いを、そのような心こそ夢よりもはかないと切り返している。
 前歌の第七百六十六首に対する返しである。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。詞書によれば、前歌の作者が思いを寄せた女の歌である。

 初句「時の間の」は、わずかな間の、の意で、前歌の四句「ただ片時の」を受けている。
 二句「うつつをしのぶ」は、現実を慕い求める、の意で、前歌の結句「うつつともがな」を受けている。
 三句「心こそ」の「こそ」は強めの係助詞である。
 四句「はかなき夢に」は、はかない夢に、の意で、本巻の第七百六十五首の初句と二句の「夢のごとはかなき」と同じく、夢をはかないものとしている。
 結句「まさらざりけれ」は、まさらないものなのだ、の意で、三句の「こそ」を受けて已然形「けれ」で結ぶ係り結びとなっている。

しのぶ:慕い求める、懐かしむ
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
思ひ寝の夜な夜な夢に逢ふことを ただ片時のうつつともがな
次の歌
玉津島深き入江を漕ぐ舟の 浮きたる恋も我はするかな