今はとて行き帰りぬる声ならば
追ひ風にても聞こえましやは
- 歌の意味
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もうこれまでと言って去っていく声であるならば、追い風に乗ってでも、あなたに聞こえたりするだろうか。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌三 778
詞書「返し」
もうこれまでと去っていく声なら、追い風に乗ってでも聞こえはしないだろう、と詠んだ返歌である。声が届いたのは別れの声だからではなく、まだ思いがあるからだと、相手の嘆きを打ち消している。
前歌の第七百七十七首に対する返しである。
作者の兼覧王は、文徳天皇の皇子である惟喬親王の子で、宮内卿などを務めた。古今和歌集にも歌が採られている。
初句「今はとて」は、もうこれまでと、の意で、前歌の四句「今は限りの」を受けている。
二句「行き帰りぬる」は、去って帰っていく、の意で、北へ帰る雁を踏まえている。
三句「声ならば」は、声であるならば、の意で、前歌の結句「声にぞありける」を受けている。
四句「追ひ風にても」は、追い風に乗ってでも、の意である。
結句「聞こえましやは」は、聞こえたりするだろうか、の意で、「まし」は反実仮想、「やは」は反語を表す。
おひかぜ:後ろから吹く風
- 作者
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兼覧王
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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雁がねの雲居遥かに聞こえしは 今は限りの声にぞありける
- 次の歌
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心からうきたる舟に乗りそめて 一日も波に濡れぬ日ぞなき