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わが恋の数をかぞへば天の原
曇りふたがり降る雨のごと

歌の意味
私の恋しい思いの数を数えるならば、大空一面が曇りふさがって降りしきる雨の粒のように、数えきれないほどである。
鑑賞
巻第十二 恋歌四 795

詞書「女につかはしける」
 恋の思いの数を数えるなら、空一面が曇りふさがって降る雨のようだ、と詠んだ歌である。数えきれない恋の思いを、空を覆って降りしきる雨の粒にたとえ、その多さと絶え間なさを訴えている。
 詞書によれば、女のもとへ送った歌である。恋歌四の巻頭歌で、巻末の第八百九十首が言い出せない思いを池の水にこもらせて年を経たと詠むのに対し、本歌は空からあふれ出る雨に思いを託しており、同じ水の景物で巻の初めと終わりが呼応している。
 作者の「敏行朝臣」は藤原敏行である。藤原富士麻呂の子で、右兵衛督に至った。三十六歌仙の一人で、能書家としても知られ、小倉百人一首には「住の江の岸に寄る波よるさへや」の歌が採られている。

 初句「わが恋の」は、私の恋の、の意で、恋の思いそのものを数えられるものとしてとらえている。
 二句「数をかぞへば」は、数を数えるならば、の意で、「かぞへ」は未然形、「ば」は仮定の条件を表す。
 三句「天の原」は、広々とした大空の意である。
 四句「曇りふたがり」は、空が曇って一面にふさがる、の意である。本巻の第八百十五首も「かたふたがりて」と「ふたがる」の語を用いている。
 結句「降る雨のごと」は、降る雨のように、の意で、「ごと」は比況の助動詞「ごとし」の語幹である。本巻の第八百十四首も、晴れる夜もなく降るものを涙として、恋の思いを雨になぞらえている。

あまのはら:広々とした大空
ふたがる:一面にふさがる、覆われる
作者
藤原敏行
出典
後撰和歌集
前の歌
あひ見ては慰むやとぞ思ひしに なごりしもこそ恋しかりけれ
次の歌
うち返し見まくぞほしき故郷の 大和なでしこ色や変はれる