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近ければ何かはしるし逢坂の
関の外ぞと思ひ絶えなん

歌の意味
近いからといって、何の甲斐があろうか。逢坂の関の向こうの人なのだと思って、すっかり思い切ってしまおう。
鑑賞
巻第十二 恋歌四 802

詞書「返し」
 近いといっても何の甲斐があろうか、逢坂の関の向こうの人と思ってあきらめよう、と詠んだ歌である。前歌が忘れないでほしいと願ったのに対し、逢えないのならいっそ思いを断とうと、すねたように切り返している。
 前歌の第八百一首への返しである。前歌の「関」「あはず」に、「逢坂の関」で応じている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「近ければ」は、近いので、の意で、近江は京から遠くないことを言う。
 二句「何かはしるし」は、何の甲斐があろうか、の意で、「かは」は反語を表す。ここで句切れとなる。
 三句「逢坂の」は、山城と近江の境にある逢坂の関の、の意で、「逢ふ」の意を響かせている。本巻の第八百五十九首も「逢坂の関」を詠んでいる。
 四句「関の外ぞと」は、関の向こう側だと、の意で、「ぞ」は強めの係助詞である。
 結句「思ひ絶えなん」は、すっかり思い切ってしまおう、の意で、「な」は強意、「ん」は意志を表す。

しるし:効き目、甲斐
おもひたゆ:思いを断ち切る、あきらめる
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
関越えて粟津の森のあはずとも 清水に見えし影を忘るな
次の歌
今はとて梢にかかる空蝉の からを見むとは思はざりしを