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住の江の目に近からば岸にゐて
波の数をもよむべきものを

歌の意味
住の江が目の届く近い所にあるのならば、岸にいて寄せる波の数も数えようものを。遠いので、絶え間ないというあなたの思いも確かめようがない。
鑑賞
巻第十二 恋歌四 819

詞書「返し」
 住の江が目に近いのなら、岸にいて波の数も数えようものを、と詠んだ歌である。絶え間なく思うという相手の言葉に対し、遠くて確かめようがないと、やんわりと疑いを示している。
 前歌の第八百十八首への返しである。前歌の「住吉の岸」「沖つ波」を受けて、「住の江」「岸」「波」で応じている。
 作者の伊勢は、藤原継蔭の娘である。宇多天皇の中宮温子に仕え、宇多天皇の寵を受けた。のちに敦慶親王との間に中務をもうけた。三十六歌仙の一人である。

 初句「住の江の」は、住吉の入り江の、の意で、前歌の「住吉の」を受けている。
 二句「目に近からば」は、目に近いのならば、の意で、「ば」は仮定を表す。
 三句「岸にゐて」は、岸に座って、の意で、前歌の「岸に来寄する」を受けている。
 四句「波の数をも」は、寄せる波の数をも、の意で、前歌の「間なく」寄せる波を受けている。巻頭の第七百九十五首も恋の思いの「数」を詠んでいる。
 結句「よむべきものを」は、数えようものを、の意で、「ものを」は逆接で、実際にはできないことを暗に示している。

すみのえ:摂津の住吉の入り江
よむ:数える
作者
伊勢
出典
後撰和歌集
前の歌
住吉の岸に来寄する沖つ波 間なくかけても思ほゆるかな
次の歌
恋ひて経むと思ふ心のわりなさは 死にても知れよわすれがたみに