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時分かぬ松の緑も限りなき
おもひにはなほ色や燃ゆらん

歌の意味
季節を区別せず常に緑の松であっても、限りない思いの火には、やはりその色が燃え立つのだろうか。
鑑賞
巻第十二 恋歌四 835

詞書「返し」
 季節を問わない松の緑も、限りない思いの火にはやはり色が燃えるのだろう、と詠んだ歌である。下の紅葉を心変わりと取った前歌に対し、それは変わらぬ心がかえって思いの火に燃えて色づいたのだと切り返している。
 前歌の第八百三十四首への返しである。前歌の「松」「緑」「紅葉」を受け、色づいたのは思いの火に燃えたためだと応じている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
 なお本文の初句は「時わかね」とあり、読み仮名の行の「ときわかぬ」と一致しない。「わかね」では意味が通らないため、ここでは読み仮名の行に従う。

 初句「時分かぬ」は、季節を区別しない、の意で、四季を通じて緑を保つ松を言う。
 二句「松の緑も」は、常緑の松の緑も、の意で、前歌の「松を緑と」を受けている。
 三句「限りなき」は、限りない、の意である。
 四句「おもひにはなほ」は、思いの火にはやはり、の意で、「おもひ」の「ひ」に「火」を掛けている。
 結句「色や燃ゆらん」は、色が燃え立つのだろうか、の意で、「や」は疑問の係助詞で、連体形「らん」で結ぶ係り結びとなっている。「燃ゆ」は「火」の縁語である。

わく:区別する
おもひ:「思ひ」の「ひ」に「火」を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
高砂の松を緑と見しことは 下の紅葉を知らぬなりけり
次の歌
水鳥のはかなきあとに年を経て 通ふばかりのえにこそありけれ