波の上にあとやは見ゆる水鳥の
うきて経ぬらん年は数かは
- 歌の意味
-
波の上に水鳥の足跡が見えるだろうか、見えはしない。水鳥が浮いて過ごすように、つらい思いで過ごしてきた年月など、数のうちに入るだろうか。
- 鑑賞
-
巻第十二 恋歌四 837
詞書「返し」
波の上に跡が見えるだろうか、水鳥が浮いて過ごしたという年など数のうちに入るだろうか、と詠んだ歌である。手紙だけの年月を嘆いた相手に対し、水上の跡など残らないもので、その年月も数えるほどのものではないと、そっけなく切り返している。
前歌の第八百三十六首への返しである。前歌の「水鳥」「あと」「年を経て」を受けて応じている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「波の上に」は、波の上に、の意である。
二句「あとやは見ゆる」は、跡が見えるだろうか、見えはしない、の意で、「やは」は反語の係助詞で、連体形「見ゆる」で結ぶ係り結びとなっている。「あと」は前歌と同じく足跡と筆跡を掛けている。ここで句切れとなる。
三句「水鳥の」は、水鳥のように、の意で、前歌の初句「水鳥の」を受けている。
四句「うきて経ぬらん」は、浮いて過ごしたという、の意で、「うき」に水鳥が「浮き」の意と「憂き」を掛けている。
結句「年は数かは」は、年は数のうちに入るだろうか、の意で、「かは」は反語を表す。
あと:水鳥の「足跡」と、手紙の「筆跡」を掛ける
うく:水鳥が「浮く」意と、「憂く」を掛ける
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
水鳥のはかなきあとに年を経て 通ふばかりのえにこそありけれ
- 次の歌
-
流れ寄る瀬々の白波浅ければ とまるいな舟かへるなるべし