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嘆けどもかひなかりけり世の中に
何に悔しく思ひ初めけん

歌の意味
嘆いても甲斐のないことであった。この世の中で、どうして悔やまれるようなかたちで、あの人を思い始めてしまったのだろう。
鑑賞
巻第十二 恋歌四 850

詞書「人につかはしける」
 嘆いても甲斐がない、どうして悔やむような思いを始めてしまったのだろう、と詠んだ歌である。報われない恋の嘆きのむなしさから、恋を始めたこと自体を悔やむ心を詠んでいる。
 詞書によれば、ある人のもとへ送った歌である。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「嘆けども」は、嘆いても、の意で、「ども」は逆接を表す。
 二句「かひなかりけり」は、甲斐がなかったことだ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。ここで句切れとなる。
 三句「世の中に」は、この世の中で、の意で、男女の仲の意も含んでいる。
 四句「何に悔しく」は、どうして悔やまれるように、の意である。
 結句「思ひ初めけん」は、思い始めたのだろう、の意で、「けん」は過去の原因を推量し、四句の「何に」を受けて連体形で結んでいる。

おもひそむ:恋しく思い始める
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
うらむともかけてこそ見め唐衣 身になれぬればふりぬとか聞く
次の歌
来ぬ人をまつの枝に降る白雪の 消えこそかへれくゆるおもひに