菊の花うつる心を置く霜に
かへりぬべくも思ほゆるかな
- 歌の意味
-
菊の花が置く霜によって色が移ろうように、移ろってしまったあなたの心も、霜に色がまた返るように、もとに戻ってしまいそうに思われることだ。
- 鑑賞
-
巻第十二 恋歌四 852
詞書「忘れ侍りにける女につかはしける」
菊の花のように移ろった心も、置く霜によってもとに返りそうに思われる、と詠んだ歌である。霜にあたって色を変える菊にたとえ、一度離れた相手の心もまた戻ってくるのではないかと期待をかけている。
詞書によれば、忘れていた女に送った歌である。次歌の第八百五十三首はこれに対する返しで、二首で贈答となっている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「菊の花」は、菊の花で、霜にあたって色が移ろう花として詠まれている。
二句「うつる心を」は、移ろう心を、の意で、菊の色の移ろいに心変わりを重ねている。
三句「置く霜に」は、置く霜によって、の意である。
四句「かへりぬべくも」は、もとに戻ってしまいそうにも、の意で、菊の色が返る意と、心がもとに戻る意を重ねている。次歌の第八百五十三首も「かへる色」と同じ語で応じている。
結句「思ほゆるかな」は、思われることだ、の意で、「かな」は詠嘆を表す。
うつる:色があせて変わる、心変わりする
かへる:色がもとに戻る意と、心がもとに戻る意を重ねる
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
来ぬ人をまつの枝に降る白雪の 消えこそかへれくゆるおもひに
- 次の歌
-
今はとてうつり果てにし菊の花 かへる色をば誰か見るべき