古典和歌stream

暁のなからましかば白露の
おきてわびしき別れせましや

歌の意味
もし暁というものがなかったならば、白露が置くように起きて、つらい別れなどしただろうか。
鑑賞
巻第十二 恋歌四 862

詞書「人のもとより帰りてつかはしける」
 暁がなかったならば、白露のように起きてつらい別れをしただろうか、と詠んだ歌である。逢瀬の後、夜明け前に起きて別れなければならないつらさを、暁がなければよいのにという形で訴えている。
 詞書によれば、恋人のもとから帰って送った歌である。次歌の第八百六十三首はこれに対する返しで、二首で贈答となっている。本巻の第八百二十六首も「白露のおきて」を詠んでいる。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を書いた。土佐日記の作者としても知られる。

 初句「暁の」は、暁というものが、の意である。
 二句「なからましかば」は、なかったならば、の意で、「ましかば」は反実仮想の仮定を表し、結句の「まし」と呼応している。
 三句「白露の」は、白露のように、の意で、露が置くことから四句の「おき」を導いている。本巻の第八百二十六首は初句に「白露の」を置き、同じく「おきて」へ続けている。
 四句「おきてわびしき」は、起きてつらい、の意で、「おき」に露が「置く」意と「起く」を掛けている。次歌の第八百六十三首も初句を「おきて行く」として応じている。
 結句「別れせましや」は、別れをしただろうか、しはしない、の意で、「や」は反語を表す。

あかつき:夜明け前のまだ暗い頃
おく:露が「置く」意と、「起く」を掛ける
作者
紀貫之
出典
後撰和歌集
前の歌
木隠れてたぎつ山水いづれかは 目にしも見ゆる音にこそ聞け
次の歌
おきて行く人の心をしらつゆの 我こそまづは思ひ消えぬれ