風をいたみくゆる煙の立ち出でても
なほこりずまのうらぞ恋しき
- 歌の意味
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風が激しいので、くすぶる塩焼きの煙が立ちのぼって離れていくように、追い立てられて出て来ても、懲りもせずにやはり須磨の浦が恋しい。あの人が心から恋しい。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌四 865
詞書「人の娘のもとに忍びつつ通ひ侍りけるを、親聞きつけていといたく言ひければ、帰りてつかはしける」
風が激しくてくすぶる煙が立ち去るように出て来ても、なお懲りずに須磨の浦が恋しい、と詠んだ歌である。親に厳しくとがめられて追い出された身を、須磨の浦の塩焼きの煙にたとえ、それでも懲りずに恋い慕う心を詠んでいる。
詞書によれば、ある人の娘のもとにひそかに通っていたが、親が聞きつけてひどく叱ったので、帰ってから送った歌である。本巻の第八百五十四首、第八百五十八首も、親に恋を阻まれた折の歌である。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を書いた。土佐日記の作者としても知られる。
初句「風をいたみ」は、風が激しいので、の意で、「を〜み」は原因や理由を表す。
二句「くゆる煙の」は、くすぶる煙が、の意で、須磨の浦の塩焼きの煙を思わせる。本巻の第八百五十一首も結句に「くゆる」を置いている。
三句「立ち出でても」は、立ちのぼって出て行っても、の意で、煙が立つ意と、自分が娘の家を出る意を重ねている。
四句「なほこりずまの」は、やはり懲りもせずに、の意で、「こりずま」に「懲りず」と地名の「須磨」を掛けている。本巻の第八百首の初句「こりずまの」と同じ掛詞である。
結句「うらぞ恋しき」は、浦が恋しい、の意で、「うら」に須磨の「浦」と、心の意の「うら」を掛けている。「ぞ」は強めの係助詞で、連体形「恋しき」で結ぶ係り結びとなっている。
くゆる:煙がくすぶる
こりずま:「懲りず」と、摂津の歌枕「須磨」を掛ける
うら:須磨の「浦」と、心の意の「うら」を掛ける
- 作者
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紀貫之
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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高砂のまつと言ひつつ年を経て 変はらぬ色と聞かば頼まむ
- 次の歌
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言はねども我が限りなき心をば 雲居に遠き人も知らなん