言はねども我が限りなき心をば
雲居に遠き人も知らなん
- 歌の意味
-
口に出しては言わないけれども、私の限りない思いを、空の彼方のように遠いあの人も知ってほしい。
- 鑑賞
-
巻第十二 恋歌四 866
詞書「初めて女のもとにつかはしける」
言わないけれども、私の限りない心を、雲の彼方のように遠い人も知ってほしい、と詠んだ歌である。初めて思いを伝える相手を、手の届かない雲居の人にたとえ、言葉にしない思いを察してほしいと願っている。
詞書によれば、初めて女のもとへ送った歌である。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「言はねども」は、口に出しては言わないけれども、の意である。本巻の第八百二十五首の「言はぬを知るは」と、言わない思いを詠む点で共通している。
二句「我が限りなき」は、私の限りない、の意である。
三句「心をば」は、思いを、の意で、「をば」は強めを表す。
四句「雲居に遠き」は、雲の彼方のように遠い、の意で、身分の高い人や手の届かない人をたとえている。
結句「人も知らなん」は、あの人も知ってほしい、の意で、「なん」は他に対する願望を表す。本巻の第八百四十二首の結句「空に知らなん」と同じ表現である。
くもゐ:雲のある所、はるかに遠い所
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
風をいたみくゆる煙の立ち出でても なほこりずまのうらぞ恋しき
- 次の歌
-
君が音にくらぶの山の時鳥 いづれあだなる声まさるらん