神無月時雨しぬらし葛の葉の
うらこがる音に鹿も鳴くなり
- 歌の意味
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十月になって時雨が降ったらしい。葛の葉の裏が焦げたように色づき、心も恋い焦がれるような声で、鹿も鳴いているようだ。
- 鑑賞
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巻第四 冬歌 218
詞書「題しらず」
鹿の鳴く声を聞いて時雨が降ったことを推し量り、葛の葉の色づきと、恋い焦がれる鹿の心とを重ねた歌である。時雨、紅葉する葛の葉、鹿の声という晩秋から初冬の景物を、恋の思いを帯びた一つの情景にまとめている。
なお本文の四句は「うらこかるねに」とあり、読み仮名の行の「うちこかるねに」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。
初句「神無月」は、陰暦十月をいい、冬の初めの月である。
二句「時雨しぬらし」は、時雨が降ったらしい、の意で、「ぬ」は完了、「らし」は根拠のある推定を表す。結句の鹿の声を根拠とした推定である。ここで句切れとなる。次歌の結句「時雨降るらし」とともに、目の前のしるしから時雨を推し量る構図を共有している。
三句「葛の葉の」は、葛の葉が風に翻って裏を見せることから、四句の「うら」を導く。
四句「うらこがる音に」は、葛の葉の裏が時雨に焦げたように色づく意と、心が恋い焦がれる意とを掛け、そのような声で、の意となる。
結句「鹿も鳴くなり」は、鹿も鳴いているようだ、の意で、「なり」は音を聞いて判断する推定の助動詞である。「も」は、時雨の音に加えて鹿までも、の意を添える。
うらこがる:葛の葉の裏が焦げたように色づく意と、心が恋い焦がれる意とを掛ける
かみなづき:陰暦十月の異名
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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かきくらし時雨るる空を眺めつつ 思ひこそやれ神なびの森
- 次の歌
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竜田川紅葉葉流る神なびの 三室の山に時雨降るらし