恋ひて寝る夢路に通ふ魂の
慣るるかひなく疎き君かな
- 歌の意味
-
恋しく思いながら寝る夢の道を通っていく私の魂が、あなたに慣れ親しんでも、その甲斐もなく、よそよそしいあなたであることよ。
- 鑑賞
-
巻第十二 恋歌四 868
詞書「消息通はしける女、おろかなるさまに見え侍りければ」
恋しく思って寝る夢路に通う魂が慣れ親しんでも甲斐がなく、よそよそしいあなたであることよ、と詠んだ歌である。夢の中では魂が通って親しんでいるのに、現実の相手は冷たいままであることを嘆いている。
詞書によれば、手紙を交わしていた女がおろそかな様子に見えたときの歌である。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「恋ひて寝る」は、恋しく思いながら寝る、の意である。
二句「夢路に通ふ」は、夢の中の道を通っていく、の意である。
三句「魂の」は、私の魂が、の意で、恋しさのあまり魂が身を離れて相手のもとへ通うと考えられていた。
四句「慣るるかひなく」は、慣れ親しんでも甲斐がなく、の意である。
結句「疎き君かな」は、よそよそしいあなたであることよ、の意で、「かな」は詠嘆を表す。
ゆめぢ:夢の中で通う道
なる:なれ親しむ
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
君が音にくらぶの山の時鳥 いづれあだなる声まさるらん
- 次の歌
-
篝火にあらぬおもひのいかなれば 涙の川に浮きて燃ゆらん