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関山の峰の杉むら過ぎゆけど
あふみはなほぞはるけかりける

歌の意味
関山の峰の杉林を過ぎて行くけれども、近江、逢う身となるのは、やはりはるかに遠いことだ。
鑑賞
巻第十二 恋歌四 875

詞書「ある人の娘あまたありけるを、姉より始めて言ひ侍りけれど、聞かざりければ、三にあたる女につかはしける」
 関山の峰の杉むらを過ぎて行くが、近江はなおはるかに遠い、と詠んだ歌である。姉妹に次々と言い寄っては断られ、三番目の娘に至っても、なお逢うことは遠いと嘆いている。
 詞書によれば、ある人に娘が大勢いたので、姉から順に言い寄ったが聞き入れられず、三番目の娘に送った歌である。関山の杉むらを一つずつ「過ぎ」ていくさまに、姉妹を順に過ぎてきたことを重ねている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「関山の」は、逢坂の関のある山の、の意で、近江への道を示している。
 二句「峰の杉むら」は、峰の杉林、の意で、同じ音の三句の「過ぎ」を導いている。
 三句「過ぎゆけど」は、過ぎて行くけれども、の意で、姉妹を順に過ぎてきたことを重ねている。
 四句「あふみはなほぞ」は、近江はやはり、の意で、「あふみ」に地名の「近江」と「逢ふ身」を掛けている。「ぞ」は強めの係助詞である。本巻の第八百四十三首、第八百五十八首、第八百五十九首も同じ掛詞を用いている。
 結句「はるけかりける」は、はるかに遠いことだ、の意で、四句の「ぞ」を受けて連体形「ける」で結ぶ係り結びとなっている。

せきやま:逢坂の関のある山
すぎむら:杉の群がり生えた所
あふみ:地名の「近江」と、「逢ふ身」を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
ひきまゆのかくふたごもりせまほしみ 桑こきたれて泣くを見せばや
次の歌
思ひ出でておとづれしける山彦の 答へに懲りぬ心なになり