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うたた寝の夢ばかりなる逢ふことを
秋の夜すがら思ひつるかな

歌の意味
うたた寝の夢ほどにはかなく短い逢瀬のことを、長い秋の夜通し思い続けたことだ。
鑑賞
巻第十三 恋歌五 898

詞書「題しらず」
 うたた寝の夢ほどにはかない逢瀬のことを、秋の夜通し思い続けた、と詠んだ歌である。短い逢瀬と長い秋の夜とを対比し、ほんのわずかな逢瀬を一晩中思い返す恋の深さを詠んでいる。
 逢瀬の短さと思い続ける時間の長さという、同じ恋を別の尺度で扱う対比が一首の中に置かれている。前歌の第八百九十七首に続き、秋の景物に寄せた歌である。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「うたた寝の」は、うたた寝の、の意で、ほんのわずかな眠りを表している。
 二句「夢ばかりなる」は、夢ほどの、の意で、逢瀬のはかなさと短さをたとえている。
 三句「逢ふことを」は、逢瀬のことを、の意である。
 四句「秋の夜すがら」は、秋の長い夜通し、の意で、二句の夢の短さと対照をなしている。
 結句「思ひつるかな」は、思い続けたことだ、の意で、「かな」は詠嘆の終助詞である。

うたたね:眠るつもりもなくうとうとと寝ること
よすがら:一晩中、夜通し
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
いつまでのはかなき人の言の葉か 心のあきの風を待つらむ
次の歌
秋の夜の草の戸ざしのわびしきは あくれどあけぬものにぞありける