逢はでのみあまたの夜をも帰るかな
人目の繁き逢坂に来て
- 歌の意味
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逢えないままで、幾夜も帰ってくることだ。逢うという名を持ちながら人目の多い逢坂まで来ておいて。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌五 905
詞書「女のもとにまかりて、え逢はで帰りてつかはしける」
逢えないまま幾夜も帰ってくることだ、人目の多い逢坂まで来て、と詠んだ歌である。「逢ふ」の名を持つ逢坂まで来ながら、人目にはばまれて逢えずに帰るもどかしさを詠んでいる。
詞書によれば、女のもとへ行ったが逢えずに帰り、送った歌である。女の家を逢坂の関になぞらえ、人目の多さを関の守りのように嘆いている。逢坂は本巻の第九百八十一首から第九百八十四首の一連でも詠まれている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「逢はでのみ」は、逢わないままで、の意で、「で」は打消しの接続助詞である。
二句「あまたの夜をも」は、幾夜も、の意である。
三句「帰るかな」は、帰ることだ、の意で、ここで句切れとなり、以下と倒置になっている。
四句「人目の繁き」は、人目の多い、の意で、女の周囲の目の厳しさを表している。
結句「逢坂に来て」は、逢坂まで来て、の意で、「逢坂」の名に「逢ふ」を重ね、逢えないことを際立たせている。
あまた:数多く
ひとめ:人の見る目、人目
あふさか:近江と山城の境にある逢坂の関。「逢ふ」を響かせる
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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降りやめば跡だに見えぬうたかたの 消えてはかなき世を頼むかな
- 次の歌
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なびく方ありけるものをなよ竹の よに経ぬものと思ひけるかな