忘るなよ別れ路に生ふる葛の葉の
秋風吹かば今帰り来む
- 歌の意味
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忘れないでほしい。別れの道に生えている葛の葉が秋風に裏返るように、秋風が吹いたなら、すぐに帰って来よう。
- 鑑賞
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巻第六 別歌 306
詞書「題しらず」
忘れないでほしいと呼びかけ、別れ路に生える葛の葉が秋風に裏返るように、秋風が吹いたらすぐに帰って来ようと約束する歌である。旅立つ側が残る人に再会を誓う歌で、葛の葉の裏返る姿に「帰る」を重ねている。
初句「忘るなよ」は、忘れないでくれ、の意で、「な」は禁止の終助詞、「よ」は呼びかけである。ここで句切れとなる。
二句「別れ路に生ふる」は、別れの道に生えている、の意で、八音の字余りである。
三句「葛の葉の」は、葛の葉の、の意で、葛の葉は風に吹かれて白い裏を見せることから、結句の「帰り」を導いている。前歌の夏衣に続き、ここで季節は秋に移る。
四句「秋風吹かば」は、秋風が吹いたならば、の意で、未然形に「ば」がついて仮定を表す。次々歌の第三百八首も秋の別れを詠んでいる。
結句「今帰り来む」は、すぐに帰って来よう、の意で、「今」はすぐに、の意、「む」は意志の助動詞である。巻頭近くの第三百四首の雁の「帰る」と、帰ることを約束する心で響き合っている。
くず:秋の七草の一つ。葉は風に裏を見せる
おふ:草木が生える。生ふ
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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夏衣たち別るべき今宵こそ ひとへに惜しき思ひ添ひぬれ
- 次の歌
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別れてふ事は誰かは始めけん 苦しきものと知らずやありけん