古典和歌stream

おく霜の暁起きを思はずは
君が夜殿に夜離れせましや

歌の意味
霜の置く寒い暁に起きて帰るつらさを思わなかったならば、あなたの寝所に通わない夜などあっただろうか。
鑑賞
巻第十三 恋歌五 914

詞書「忍びてまで来ける人の、霜のいたく降りける夜まからで、つとめてつかはしける」
 霜の置く暁に起きて帰るつらさを思わなければ、あなたの寝所に通わない夜などあっただろうか、と詠んだ歌である。霜の降りた夜に訪れなかった言い訳として、霜の朝に起きて帰るつらさを持ち出している。
 詞書によれば、忍んで通って来ていた人が、霜のひどく降りた夜に来ないで、翌朝に送ってきた歌である。前歌の第九百十三首の暁の起き別れを受け、次歌の第九百十五首にはこれに対する女の返しが置かれている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「おく霜の」は、置く霜の、の意で、「おく」は霜が「置く」意であるとともに、同音で二句の「起き」を導いている。
 二句「暁起きを」は、暁に起きて帰ることを、の意である。
 三句「思はずは」は、思わなかったならば、の意で、仮定の条件を表している。
 四句「君が夜殿に」は、あなたの寝所に、の意である。
 結句「夜離れせましや」は、通わない夜などあっただろうか、いやない、の意で、「まし」は反実仮想の助動詞、「や」は反語を表している。

おく:霜が「置く」意で、同音で「起く」を導く
よどの:寝所、寝室
よがる:男が女のもとへ通わなくなる、夜離れする
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
常よりも起き憂かりつる暁は 露さへかかるものにぞありける
次の歌
霜置かぬ春よりのちのながめにも いつかは君が夜離れせざりし