目に見えぬ風に心をたぐへつつ
やらば霞の別れこそせめ
- 歌の意味
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目に見えない風にあなたの心を添えて送ってくださるのなら、そのときには霞のように別れて行くこともいたしましょう。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌五 930
詞書「返し」
目に見えない風に心を添えて送ってくれるなら、霞のように別れもしよう、と詠んだ歌である。前歌の風と霞を受け、風に託してあなたの心を寄せてくれるのなら、安心して旅立てると答えている。
前歌の第九百二十九首への返歌である。前歌が風のほかに誰が訪ねるかと言ったのに対し、その風に心を添えてくれるならと条件をつけて応じており、霞と風の語を共有して贈答をなしている。
作者の伊勢は、藤原継蔭の娘で、宇多天皇の中宮温子に仕え、宇多天皇の寵を受けた。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「難波潟短き葦のふしの間も」の歌が採られている。
初句「目に見えぬ」は、目に見えない、の意で、風の性質をいう。
二句「風に心を」は、風にあなたの心を、の意で、前歌の「風」を受けている。
三句「たぐへつつ」は、添えながら、の意で、「たぐふ」は連れ添わせる意である。
四句「やらば霞の」は、送ってくれるなら霞の、の意で、「ば」は仮定の条件を表す。前歌の「春霞」を受けている。
結句「別れこそせめ」は、別れもしよう、の意で、「め」は意志の助動詞「む」の已然形で、「こそ」を受けて結ぶ係り結びとなっている。
たぐふ:連れ添わせる、伴わせる
- 作者
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伊勢
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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春霞はかなくたちて別るとも 風より外に誰か訪ふべき
- 次の歌
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深緑染めけん松のえにしあらば 薄き袖にも浪は寄せてん