わび果つる時さへものの悲しきは
いづこを忍ぶ心なるらん
- 歌の意味
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すっかり思い嘆き尽くしてしまった時でさえ、なおなんとなく悲しいのは、あの人のどこを恋い慕う心なのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌五 936
詞書「男の忘れ侍りにければ」
すっかり嘆き尽くした時でさえなお悲しいのは、あの人のどこを慕う心なのだろう、と詠んだ歌である。忘れられて嘆き尽くし、もうあきらめたはずなのに、なお消えない悲しみに、断ち切れない未練を自ら問いかけている。
詞書によれば、男が自分を忘れてしまったので詠んだ歌である。次歌の第九百三十七首も伊勢の歌で、伊勢の歌が二首続けて配されている。
作者の伊勢は、藤原継蔭の娘で、宇多天皇の中宮温子に仕え、宇多天皇の寵を受けた。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「難波潟短き葦のふしの間も」の歌が採られている。
初句「わび果つる」は、すっかり嘆き尽くした、の意である。
二句「時さへものの」は、その時でさえなんとなく、の意で、「さへ」は添加を表す副助詞である。
三句「悲しきは」は、悲しいのは、の意である。
四句「いづこを忍ぶ」は、どこを恋い慕う、の意で、相手のどこにまだ心が残っているのかと自らに問うている。
結句「心なるらん」は、心なのだろうか、の意で、「らん」は現在の原因を推量する助動詞「らむ」である。
わびはつ:すっかり思い嘆き尽くす
しのぶ:恋い慕う、懐かしく思う
- 作者
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伊勢
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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あしひきの山下繁く行く水の 流れてかくし訪はばたのまむ
- 次の歌
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いなせとも言ひ放たれず憂きものは 身を心ともせぬ世なりけり